「天然酵母」という言葉に、どんなイメージをお持ちですか?
「体に優しい」
「プロが使うもの」
「自家製って難しそう」
「そもそもイーストとどう違うの?」
天然酵母は、その名の通り、果物や穀物、空気中など自然界に存在する酵母(と乳酸菌などの微生物)の力を借りて生地を発酵させるための種、あるいはその製法全般を指します。
市販のイーストとは異なる、奥深い風味や独特の食感を生み出すことから、パンやお菓子作りの世界で注目を集めています。
今回の記事は、そんな「天然酵母」について知りたいあなたが、その基本から活用法までを理解できる完全ガイドです。
天然酵母とは一体何か?
イーストとの違いは?
どのような種類があるのか?
そして、どのように作られ、パン作りでどのように使われるのか?
天然酵母の世界を知ることで、あなたのパン作りはきっともっと豊かで楽しいものになるはずです。
さあ、一緒に天然酵母の全てを見ていきましょう。
「天然酵母」とは?市販のイーストとの決定的な違い
天然酵母とは、特定の単一または少数の酵母菌株を純粋培養した市販の「パン酵母(イースト)」とは異なります。
自然界から採取された、または意図的に穀物や果物などの微生物を利用して培養された、様々な種類の酵母や乳酸菌などが共存する発酵種のことです。
パンを膨らませる主役は酵母ですが、天然酵母には酵母以外の様々な微生物も含まれています。
これらの働きが複合的に作用することで、パンに独特の風味や食感をもたらします。

自家製天然酵母の「作り方」完全ガイド:元種の育て方からパンへの使い方まで【初心者歓迎】

天然酵母でパン作り:奥深い味わい、自家製酵母の育て方まで徹底解説
市販イーストとの違い
構成成分
イーストは特定の酵母菌株の純粋培養。
天然酵母は多様な微生物の共存。
発酵力と時間
イーストは発酵力が強く、短時間で生地を膨らませます。
天然酵母は発酵力が穏やかで、時間をかけてゆっくりと発酵が進みます。
風味と香り
イーストのパンは比較的シンプルな風味です。
天然酵母は微生物の多様性により、複雑で深みのある風味や独特の香りが生まれます。
安定性
イーストは安定していて発酵力が均一です。
天然酵母は環境(温度、湿度、餌となる材料)に影響されやすく、発酵力が変動しやすいです。
手軽さ
イーストは手軽に購入でき、すぐに使えます。
天然酵母は、自分で育てる(自家製酵母)か、管理された状態のものを購入します。
使用前に「元種」を活性化させる手間が必要です。

なぜ魅了される?天然酵母パン・作りの魅力
天然酵母を使ったパン作りには、イーストにはない特別な魅力がたくさんあります。
深く複雑な「風味」と「香り」
天然酵母最大の魅力は、その豊かな風味と香りにあります。
長時間の発酵過程で、酵母や乳酸菌などが材料の糖分などを分解し、様々な芳香成分や有機酸、アミノ酸などを生成します。
これにより、奥行きのある、複雑で美味しい「うまみ」が生まれます。
独特の「食感」
天然酵母を使ったパンは、種類によって異なります。
一般的に小麦の風味や甘みが引き出されやすく、しっかりとした弾力や、しっとり・もちもちとした独特の食感になることが多いです。
噛むほどに味わいが増すパンになります。
「生きている」酵母を育てる喜び
自分で天然酵母(自家製酵母)を育てる過程は、まるで生き物を育てるような感覚です。
日々変化する酵母の状態を観察し、愛情を込めてケアすることで、より一層パン作りへの愛着が湧きます。
体に優しいイメージと消化の良さ?
天然酵母による長時間発酵は、材料の一部を分解するため、小麦パンに比べて消化が良いと感じる人も多いです。
また、乳酸菌の働きによる健康への良いイメージも魅力の一つです。
代表的な「天然酵母」の種類
天然酵母には様々な種類があり、それぞれに特徴があります。
自家製酵母(フルーツ酵母、穀物酵母、野菜酵母など)
りんごやレーズンなどの果物、小麦や米などの穀物、野菜などを材料に、空気中の野生酵母を取り込んで培養した酵母です。
使用する材料によって、パンに加わる風味や発酵力が異なります。
手軽に始められるものが多いです。

レーズン酵母の「作り方」完全ガイド:酵母液・元種の起こし方から育て方まで【初心者向け】
サワー種 / ルヴァン種
小麦粉やライ麦粉と水を混ぜて培養される酵母です。
乳酸菌の働きが活発で、特有の酸味を持つパンに仕上がります(サワーブレッド)。
欧米で伝統的に使われる天然酵母の代表格です。
酒種(さかだね)
炊いたお米、米麹、水を元に培養される、日本に古くから伝わる伝統的な天然酵母です。
穏やかな酸味と、お米由来の優しい甘み、芳醇な香りが特徴です。
酒饅頭や酒種パンに使われます。
日本の伝統酵母「酒種」について、詳しくはこちらをご覧ください!

酒種とは?日本の伝統酵母「酒種」の魅力、作り方、使い方を徹底解説【完全ガイド】
天然酵母は「どうやって」作るの?「元種」の育て方
天然酵母を使うためには、パン生地に混ぜ込むための「元種(もとだね)」が必要です。
元種は、最初に酵母を「起こし」、その後定期的に材料(多くは粉と水)を加えて「継ぎ足し」ながら育て、活性を維持します。
酵母を起こす
果物や穀物などの材料と水、砂糖などを合わせ、温度管理しながら自然の酵母が増えるのを待ちます(数日~1週間程度)。
ぷくぷくと泡が出て活発な状態になったら酵母液や元種の元ができます。
元種を育てる・維持する
できた元種に、定期的に新しい粉や水を「餌」として与え、酵母の活性を保ちます。
冷蔵庫で保存し、使う前に常温に戻して継ぎ足して活性化させるのが一般的な管理方法です。
天然酵母の種類によって、元種の作り方や管理方法は異なります。
それぞれに最適な方法を知ることが、美味しいパン作りに繋がります。
代表的な天然酵母の詳しい作り方や、元種の育て方・管理方法については、以下の記事で解説しています!

天然酵母を使ったパン作り(レシピへの入口)
天然酵母を元気な元種にできたら、いよいよパン作りに使ってみましょう。
天然酵母を使ったパン作りは、イーストとは異なる点がいくつかあります。
発酵時間が長い
イーストより発酵に時間がかかるため、レシピ全体で長めの時間を見込む必要があります。
オーバーナイト発酵などもよく行われます。
生地の状態の見極め
生地の発酵具合を、時間だけでなく生地の膨らみ方、柔らかさ、香りなどで判断する感覚が重要になります。
レシピ調整
天然酵母の力価(発酵力)は変動します。
- レシピの水分量や発酵時間を調整することが必要になる場合もあります。
天然酵母の種類によって、レシピの配合や工程も変わってきます。
それぞれの酵母に合ったレシピを使うことが成功の鍵です。
天然酵母を使った美味しいパンのレシピはこちらをご覧ください!

「おうちで本格」酒種パンの基本レシピ:天然酵母の芳醇な香りを自宅で(米粉パン好きにも)

天然酵母の世界へ、一歩踏み出してみよう!
天然酵母は、時間も手間もかかりますが、それに見合うだけの感動と発見がある世界です。
ぷくぷくと発酵する様子を観察する
自家製酵母でパンが膨らむ喜びを味わう
何より、天然酵母でしか出せない奥深い風味のパンを味わった時の感動は格別です。
当ブログでは、日本の伝統的な酒種や、米粉を使ったパン作りなど、様々な角度からパンの世界を探求しています。
天然酵母の世界も、きっとあなたのパン作りをもっと豊かにしてくれるはずです。
天然酵母とは、自然の力を借りた、多様な微生物が共存する発酵種のことです。
市販イーストとは違う、その奥深い風味、独特の食感、そして育てる楽しみが、多くのパン好きを惹きつけています。
サワー種や酒種など様々な種類があり、それぞれに合った作り方や使い方があります。
最初は難しく感じるかもしれません。
基本を知り、焦らず、酵母との対話を楽しむ気持ちで取り組めば、きっと美味しい天然酵母パンに出会えるでしょう。
ぜひこの記事を入り口に、天然酵母の世界への扉を開けてみてください。
そして、あなたのパン作りライフを、さらに奥深く、楽しいものにしてくださいね!