「酒種パンのレシピを探している」
そんなあなたは、あの独特の芳醇な香りと、しっとり、もっちりとした食感をご自宅で再現したいと思っていることでしょう。
酒種パンは、日本の伝統的な天然酵母「酒種」を使って作る、格別の味わいを持つパンです。
米粉パン作りを楽しまれている方の中にも、天然酵母を使ったパンや、日本ならではのパンに興味がある方は多いのではないでしょうか。
使用する粉は主に小麦粉です。
お米を元にした酵母を使う点、そして天然酵母ならではのじっくりとした発酵がもたらす豊かな風味や食感は、米粉パンにも通じるものがあります。
今回の記事では、酒種酵母を使った、基本的な酒種パンの作り方を詳しく解説します。
材料の準備から焼き上げまでの工程を追って、天然酵母ならではの発酵のコツや、失敗しないためのポイントもお伝えします。
少し時間はかかりますが、焼き立ての酒種パンの香りは格別!
ぜひ、ご自宅で本格的な酒種パン作りに挑戦してみてください。

天然酵母とは?自家製酵母の魅力、種類、作り方、パンへの使い方完全ガイド
酒種パン作りに必要なもの(始める前に)
本格的な酒種パンを作るには、まず「活性のある酒種スターター(元種)」が必要です。
酒種酵母の作り方や育て方については、別の記事で詳しく解説しています。

酒種とは?日本の伝統酵母「酒種」の魅力、作り方、使い方を徹底解説【完全ガイド】


本レシピでは、すでにパン作りに使える状態のスターターがあることを前提に進めます。
準備するもの
- 活性のある酒種スターター
- パン作り用スケール(正確な計量のため)
- ボウル(生地を混ぜる、発酵させる)
- ドレッジ(生地を扱う)
- 捏ね台 または スタンドミキサー
- キャンバス地 または 布巾(発酵中に生地が乾燥しないように)
- お好みの成形道具(スケッパー、めん棒など)
- 発酵かご(必要に応じて)
- オーブン または ホームベーカリー(焼成機能付き)
- ベイキングシート または クッキングシート

基本の酒種パン レシピ
今回は、手捏ねでも作りやすい、シンプルな角食パン風のレシピをご紹介します。
材料(約1.5斤分):
- 強力粉: 300g
- 砂糖: 20g
- 塩: 5g
- 牛乳(または水): 200g
- 無塩バター: 20g
- 活性化させた酒種スターター(水分・粉合わせ): 100g
- 酒種スターターの状態によって加える水分量は調整してください。
Step 1: 材料を混ぜ合わせる(捏ね上げまで)
- ボウルに強力粉、砂糖、塩を入れ、軽く混ぜ合わせます。
- 別のボウルに牛乳(または水)と活性化させた酒種スターターを入れ、よく混ぜて溶かします。
- 粉類のボウルに、液体と酒種スターターを合わせたものを一度に加え、ゴムベラなどで粉っぽさがなくなるまで混ぜ合わせます。
- 生地がまとまったら、捏ね台に出し、捏ね始めます。生地が滑らかになるまで、しっかりと捏ねます(目安:手捏ねで15〜20分)。ベタつく場合は、少しだけ打ち粉(分量外)を使っても構いません。
- 生地が滑らかになったら、室温に戻して柔らかくした無塩バターを生地に練り込みます。バターが均一に混ざり、生地につやが出て、薄い膜ができるまでさらに捏ねます。
Step 2: 一次発酵(生地に風味と気泡を入れる)
- 捏ね上がった生地を丸め、薄く油(分量外)を塗ったボウルに入れます。乾燥しないようにラップをかけます。
- 暖かい場所(25〜28℃が理想)で、生地が元の大きさの2〜2.5倍になるまで一次発酵させます。酒種の発酵力や室温によって時間は大きく変動しますが、目安として6〜12時間、または一晩かかることが多いです。ゆっくり時間をかけることで、風味が増します。
- 発酵完了の目安:生地が大きく膨らみ、指で優しく押すと跡がゆっくり戻るくらい(フィンガーテスト)。過発酵にならないよう注意しましょう。
Step 3: ガス抜きと分割、丸め
- 一次発酵が終わった生地を優しく捏ね台に出し、生地を傷めないように優しく押さえてガスを抜きます。
- 生地をスケールで測り、作りたいパンの数に分割します(例:1.5斤型なら1個、ミニ食パン型なら2個など)。
- 分割した生地をそれぞれ丸め、表面を張らせます。乾燥しないように布巾などをかぶせ、約15分ベンチタイム(生地を休ませる時間)を取ります。
Step 4: 成形と二次発酵(焼き上げ直前の準備)
- ベンチタイムが終わった生地を優しく広げ、お好みの形に成形します。角食パンなら、めん棒で伸ばして三つ折りにし、さらに巻いて閉じ目をしっかりと閉じます。
- 成形した生地を、油を塗った型に入れるか、ベイキングシートを敷いた天板に並べます。
- 乾燥しないようにビニール袋をかぶせるか、大きなビニール袋に天板ごと入れ、暖かい場所(28〜32℃が理想)で二次発酵させます。
- 生地が型の8〜9割、または元の大きさの1.5〜2倍に膨らむまで発酵させます。これも酒種の状態によって時間は変動しますが、目安として1〜3時間程度です。
- 発酵完了の目安:生地がふっくらとして弾力がなくなり、指で優しく押すと跡が少し残るくらい。二次発酵の見極めは酒種パンの成功の鍵です。過発酵は生地の腰折れの原因になります。
Step 5: 焼成(いよいよ焼き上げ!)
- オーブンを焼成温度に予熱します。角食パンの場合、180〜190℃が目安です。
- 二次発酵が完了した生地をオーブンに入れます。必要に応じて、焼き始めに霧吹きで庫内に蒸気を少し加えると、皮がパリッと焼き上がります。
- 設定温度で、表面に綺麗な焼き色がつき、底を叩くとコンコンと軽い音がするまで焼きます。焼き時間目安:角食パン約25〜35分(サイズによる)。
- 焼きあがったらすぐに型から出し、網の上などで粗熱を取ります。完全に冷めてからカットすると、綺麗に切れます。
酒種パンを美味しく作るコツと注意点
酒種スターターの活性
レシピ通りに進めても膨らみが悪い場合、スターターの活性が低い可能性があります。
使う前に元気な状態に立て直しましょう。
温度管理
酒種の発酵は温度に大きく影響されます。
指定された温度帯を保つことが重要です。
特に一次発酵は室温に注意が必要です。
発酵の見極め
時間はあくまで目安です。
生地の状態(膨らみ具合、ガス感、指への感触)をしっかり観察して判断しましょう。
天然酵母パンの面白さであり、難しさでもあります。
捏ね不足/過捏ねに注意
しっかり捏ねることは重要です。
しかし、過度に捏ねすぎると生地が傷むこともあります。
生地の状態を見ながら調整しましょう。
焦げ付き防止
途中で表面が焦げそうなら、アルミホイルをかぶせて調整してください。
米粉パン作りにも通じる天然酵母パンの魅力
伝統的な酒種パンは小麦粉を使います。
天然酵母を扱う技術や、発酵を見極める感覚は、米粉パン作りにも共通する部分が多くあります。

自家製天然酵母の「作り方」完全ガイド:元種の育て方からパンへの使い方まで【初心者歓迎】
ゆっくりな発酵を楽しむ
イーストのように短時間で劇的に膨らまずじわじわと時間をかけて生地が育っていく様子は、天然酵母ならではの面白さです。
米粉パンも、酵母の種類によってはゆっくり発酵するものがあります。
風味の探求
酒種がお米由来の風味を生み出すように、米粉パンも米粉の種類や発酵方法によって様々な風味や食感が生まれます。
天然酵母は、その素材の風味をより深く引き出す力があります。
米粉酒種パンへの挑戦
「米粉 酒種パン レシピ」というキーワードに興味がある方もいるかもしれません。
伝統的な酒種パンのように100%米粉で同じ構造を作るのは難しいです。
しかし、米粉を使った酒種スターターを作ったり、小麦粉に米粉をブレンドして酒種パンを作るなど、探求の余地はたくさんあります。
天然酵母と米粉、それぞれの良さを引き出す新しいレシピ開発も面白いでしょう。
米粉パン愛好家へ:グルテンフリーの米粉酒種パンに挑戦するには
さて、米粉パン作りをされている方の中には、「米粉100%で、グルテンフリーの酒種パンは作れるの?」と疑問に思われた方もいるかもしれません。
「米粉 酒種パン レシピ」というキーワードで探されている方もいらっしゃるでしょう。
結論から言うと、可能です。
しかし、これは小麦粉を使った酒種パンや、一般的な米粉パンとは全く異なるアプローチが必要になります。
グルテンフリー米粉酒種パンの課題と特徴
- グルテンがない: 米粉にはグルテンがないため、酒種酵母が発生させるガスを保持する骨格がありません。そのままでは膨らまず、重く固いパンになってしまいます。
- バインダー(つなぎ)が必要: グルテンの代わりに、サイリウムハスクや増粘多糖類などのバインダーを使用して、生地に粘りと保形性を持たせる必要があります。
- 酒種スターター自体の見直し: 小麦粉を継ぎ足して維持している酒種スターターはグルテンが含まれます。グルテンフリーにするためには、米、米麹、水、そして必要であればグルテンフリーの酵母のみで酒種スターターを育成する必要があります。
- 生地の扱いの違い: 小麦粉の生地のように捏ねて弾力を出すのではなく、バインダーを使った米粉の生地は、非常に柔らかい、またはバッター液状になることが多いです。成形も難しく、型に入れてそのまま発酵・焼成するのが一般的です。
- 独特の食感と膨らみ: 焼き上がりは、小麦の酒種パンのようなふっくらとした軽さや強い弾力ではなく、よりしっとり、みっちりとした、米粉ならではの独特の食感になります。膨らみも小麦ほど高くはなりにくい傾向があります。
挑戦するためのポイント
- グルテンフリーの酒種スターターを用意する: これが第一歩です。米と米麹を使い、継ぎ足しの際も米粉のみを使用します。
- 適切なバインダーを見つける: サイリウムハスクが比較的扱いやすいですが、製品によって吸水率が異なるため調整が必要です。レシピによっては他の粉類(タピオカ粉、片栗粉など)をブレンドすることもあります。
- 水分量を調整する: 使用する米粉の種類やバインダーによって最適な水分量は異なります。一般的な小麦パンよりも水分量が多くなります。
- 生地の状態を見極める: グルテンがないため生地の「伸び」や「弾力」で判断できず、発酵具合は生地の膨らみや表面の様子、香りなどで判断します。
- 根気強く試行錯誤する: 米粉の種類、酒種スターターの状態、バインダーの種類と量、水分量、発酵温度と時間など、様々な要素が影響するため、理想の結果を得るまでには何度も試作が必要になることを覚悟しましょう。
グルテンフリーの米粉酒種パンは、まだ情報が多くなく、確立された「基本レシピ」が少ない分野です。
もし挑戦される場合は、上記のポイントを参考に、米粉パン作りで培った知識や経験を活かしながら、根気強く取り組んでみてください。
天然酵母と米粉という、和の素材を組み合わせた、新しいパンの世界が広がるかもしれません。
より詳しいレシピやコツについては、専門の書籍や、グルテンフリーかつ天然酵母での米粉パン作りを深く研究されている方の情報を参考にすることをおすすめします。
米粉パン教室アトリエよしでは、酒種を使った米粉パン教室を開催しています。
ご興味があればこちらもご覧ください。

手作り酒種パンの美味しさを体験しよう
酒種パン作りは、少し時間と手間がかかります。
ですが、焼き立ての香りと味は市販品ではなかなか味わえない格別なものです。
今回の記事でご紹介した基本レシピを参考に、ぜひご自宅で挑戦してみてください。
天然酵母を扱い、生地と向き合う時間は、きっとパン作りをもっと深く、面白くしてくれるはずです。